亡くなった親や祖父の家から、古銭のコレクションが見つかりませんでしたか。
「これも相続税の対象になるのか」「いくらで評価すればよいのか」と、手が止まっているかもしれません。古銭は、種類や状態によって価値に大きな幅があり、相続税の計算でも扱いに迷いやすい財産です。
この記事では、国税庁の公式情報(タックスアンサー・財産評価基本通達)をもとに、古銭や骨董品が相続税の対象になるか、評価額がどう決まるか、申告が必要になる目安をまとめます。
・国税庁は、相続税の対象を「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」としています。古銭も、価値があれば対象になります。
・古銭の評価は、売買実例価額や精通者意見価格などを参酌して行います。
・申告が必要になるのは、財産の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合です。申告期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
古銭も相続税の対象になります
国税庁は、相続税がかかる財産を、次のように説明しています。
現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの
出典:国税庁 タックスアンサー No.4105「相続税がかかる財産」
古銭は、この説明に名前が挙がっていません。ただし、金銭に見積もることができる経済的価値があれば、「すべてのもの」に含まれます。
古銭の評価額は、どう決まるか
相続税の評価の基本は、国税庁の財産評価基本通達に定められています。古銭に関係する条文は、次のとおりです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 通達128(一般動産の評価単位) | 一般動産の価額は、原則として、1個または1組ごとに評価する。ただし、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で、1個または1組の価額が5万円以下のものは、それぞれ一括して、一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる |
| 通達129(一般動産の評価) | 一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する |
| 通達135(書画骨とう品の評価) | 書画骨とう品(販売業者が持つものを除く)の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する |
出典:国税庁 財産評価基本通達
古銭が、書画骨とう品にあたるのか、一般動産にあたるのかは、通達に明記されていません。ただし、どちらの場合も、評価の基本は同じ「売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する」と定められています。
「売買実例価額」と「精通者意見価格」
通達は、評価額を、この2つなどを「参酌」して決めるとしています。「参酌」は、参考にして取り入れる、という意味の言葉です。1つの数字に自動的に決まるとは、書かれていません。
通達129には、売買実例価額や精通者意見価格などが明らかでない動産について、同種で同規格の新品の小売価額から、償却費の額を差し引いて評価する、という規定もあります。
古銭の価値は、1枚ごとに大きく違います
通達128は、一般動産を「1個または1組ごと」に評価するとしています。古銭は、同じ「古銭」でも、種類や状態によって価値が大きく違います。ヤフオクの落札実績(2026年10月に確認)から、例を挙げます。
| 古銭の例 | 落札価格の目安 |
|---|---|
| 500円記念硬貨(白銅貨など、バラ1枚) | 600〜700円前後(中央値) |
| 板垣退助の100円札(1枚) | 300円前後(中央値) |
| 中部国際空港開港記念500円銀貨(プルーフ貨幣セット) | 5,400円(中央値) |
| 板垣退助の100円札(100枚の帯付き束) | 12,930円(中央値) |
| 福耳が付いた板垣退助の100円札 | 113,300円(1件) |
それぞれの詳しい内容は、次の記事でまとめています。
コレクション全体を1つの金額で考えず、種類ごとに仕分けておくと、評価額の見当をつけやすくなります。
相続税がかからないものもあります
国税庁は、相続税がかからない財産のうち主なものとして、次のものを挙げています。
墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物。ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
出典:国税庁 タックスアンサー No.4108「相続税がかからない財産」
古銭は、この「日常礼拝をしている物」には、通常あたりません。骨とう的価値があるものは、仏具などでも相続税がかかる場合があると、国税庁は案内しています。
申告が必要になる目安
古銭の評価額が、そのまま税額になるわけではありません。相続税の申告が必要かどうかは、相続した財産全体の合計額で決まります。
国税庁は、相続税の計算について、次のように定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基礎控除額 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
| 申告が必要な場合 | 取得した財産の価額の合計額が、基礎控除額を超える場合 |
| 申告が不要な場合 | 取得した財産の価額の合計額が、基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ない |
出典:国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」、No.4205「相続税の申告と納税」
計算例(数字は説明用の仮の金額です)
法定相続人が2人の場合の、基礎控除額は次のとおりです。
- 3,000万円+600万円×2人=4,200万円
預貯金や不動産などの合計が4,000万円のとき、古銭の評価額によって、申告の要否が変わります。
| 古銭の評価額(仮) | 財産の合計額 | 基礎控除額(4,200万円)との比較 |
|---|---|---|
| 100万円 | 4,100万円 | 範囲内。申告も納税も必要ない |
| 300万円 | 4,300万円 | 超える。申告が必要 |
古銭のコレクションの評価額が、基礎控除を超えるかどうかの分かれ目になる場合があります。
申告期限と、遅れた場合
相続税の申告期限は、国税庁によると次のとおりです。
被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内
出典:国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」
期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限とみなされます。申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、加算税や延滞税がかかる場合があります。
評価額を調べるために使える情報
古銭は、評価額の見当をつけにくい財産です。次のような情報が、評価額を調べる材料になります。
| 情報 | 内容 |
|---|---|
| 買取業者の査定 | 福ちゃんは「査定料、出張料、送料、キャンセル料といった手数料は一切いただきません」、バイセルは「査定料・キャンセル料など各種無料です」と案内している |
| 鑑定書 | 日本貨幣商協同組合の鑑定料は、鑑定品の価格(時価)に応じて11,000円〜165,000円(税込)。発行には、2週間から2か月かかる |
| 市場での売買の実例 | ヤフオクなどの落札相場や、買取業者の価格表で、市場での売買の実例を確認できる |
鑑定書については、次の記事でまとめています。
通達は、評価額を「参酌して」決めるとしています。査定額や落札相場は、あくまで参考資料です。最終的な評価額の考え方は、税務署の相談窓口や税理士に相談できます。国税庁は、「税についての相談窓口」を案内しています。また、相続財産の金額などを入力すると、申告のおおよその要否を判定できる「相続税の申告要否判定コーナー」も用意しています。
申告書のどこに書くか
相続税の申告書には、財産の種類ごとに明細書があります。国税庁の入力要領では、第11表の付表4が、「相続税がかかる財産の明細書(事業(農業)用財産・家庭用財産・その他の財産用)」と記載されています。古銭を、どの区分で書くかは、税務署や税理士に確認できます。
相続した古銭を売るときの注意点
遺産分割の対象になります
バイセルの公式サイトは、故人の古銭は「遺産」となるため、遺産分割の対象になると説明しています。トラブルを防ぐために、事前に相続人全員で相談して、同意を得ておくことをすすめています。
売ったときの税金
相続した古銭を売って利益が出たときは、所得税(譲渡所得)の対象になる場合があります。所得税法60条1項は、相続で取得した資産を譲渡した場合の譲渡所得の計算について、「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」と定めています。取得費や取得時期は、亡くなった方のものが引き継がれます。
貴金属・骨董品などで、1個または1組の価額が30万円を超えるものを売った利益は、課税対象になります。詳しくは、次の記事でまとめています。
相続した古銭を見つけたときの流れ
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 古銭の数と、種類(古銭・紙幣・記念硬貨・金貨など)を、おおまかに確認する。汚れは、落とさない |
| 2 | 買取業者に、無料で査定を依頼して、評価額の見当をつける |
| 3 | 財産の合計額が、基礎控除額を超えるかを確認する。迷ったときは、税務署の相談窓口や税理士に相談する |
| 4 | 売るかどうかは、相続人全員で相談して決める |
| 5 | 申告が必要な場合は、死亡を知った日の翌日から10か月以内に、申告する |
遺品整理で古銭を見つけたときの、全体の流れは、次の記事でまとめています。
複数の買取業者の査定額を比べておくと、評価額の見当をつけやすくなります。
まとめ
- 古銭は、金銭に見積もることができる経済的価値があれば、相続税の対象になります
- 評価は、売買実例価額、精通者意見価格などを参酌して行います
- 申告が必要かどうかは、財産全体の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかで決まります
- 申告期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内です
- 相続した古銭は、遺産分割の対象になるため、売る前に相続人全員で相談します
よくある質問
Q. 古銭は、相続税の対象になりますか?
A. 国税庁は、相続税がかかる財産を、「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」としています。古銭も、経済的価値があれば対象になります。
Q. 骨董品は、相続税の対象になりますか?
A. 国税庁は、相続税がかかる財産を、「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」としています。財産評価基本通達135には、書画骨とう品の評価が定められています。骨董品も、経済的価値があれば、評価して、財産に含めます。
Q. 貴金属や宝石は、相続税の対象になりますか?
A. 国税庁は、相続税がかかる財産の例として、「宝石」を挙げています。貴金属は名前が挙がっていませんが、金銭に見積もることができる経済的価値があれば、同じ考え方になります。
Q. 古銭の評価は、誰がするのですか?
A. 評価の基本は、財産評価基本通達に定められています。売買実例価額、精通者意見価格などを参酌して評価します。評価額の考え方は、税務署の相談窓口や税理士に相談できます。
Q. 古銭の合計が少額でも、申告が必要ですか?
A. 国税庁は、取得した財産の価額の合計額が、基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ないと案内しています。古銭だけでなく、預貯金や不動産などを含めた合計額で判断します。
Q. 申告の期限はいつですか?
A. 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
Q. 相続した古銭を売ったら、税金はかかりますか?
A. 売って利益が出たときは、所得税(譲渡所得)の対象になる場合があります。貴金属・骨董品などで、1個または1組の価額が30万円を超えるものを売った利益は、課税対象です。