実家の片付けや遺品整理で見つけた古銭を、売ろうと考えていませんか。
そのとき、気になるのが税金ではないでしょうか。「売ったお金に税金がかかるのか」「確定申告をしなければならないのか」。業者に査定を頼む前に、一度整理しておきたいところです。
この記事では、国税庁が公表している情報と法令の条文をもとに、古銭を売ったときの税金の考え方を整理します。
・家具や衣服などの生活用動産を売った利益は非課税です。ただし貴金属・宝石・書画・骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものは課税対象になります。
・課税対象になる場合の計算式は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除50万円」です。所有期間が5年を超えると、その2分の1が課税対象になります。
・会社員などの給与所得者は、給与以外の所得金額の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。
古銭を売って得た利益は「譲渡所得」になります
国税庁は、譲渡所得を「資産の譲渡による所得」と説明しています。対象となる資産には、金地金、宝石、書画、骨とうなどが含まれます。
土地・建物や株式等以外の資産を売ったときの譲渡所得は、給与所得や事業所得などと合算して税額を計算する「総合課税」の対象です。給与などと合わせたうえで、所得税法に定められた累進税率で税額が決まります。
つまり、古銭を売って買った金額より高く売れた場合、その差額が譲渡所得として扱われます。
「総合課税」と「分離課税」の違い
譲渡所得の税額の計算方法は、売る資産の種類によって2つに分かれます(国税庁 No.3105)。
| 売る資産の種類 | 課税方法 |
|---|---|
| 土地・建物 | 分離課税 |
| 株式等 | 分離課税(一部は総合課税) |
| その他の資産 | 総合課税 |
分離課税は、他の所得と区別して、租税特別措置法に定められた税率で計算します。総合課税は、他の所得の金額と合計して、所得税法に定められた累進税率で計算します。
「譲渡」にあたるのは、売ることだけではありません
国税庁は、譲渡を「有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為」と説明しています。通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済なども含まれます(No.3105)。
古銭を現金で売る場合だけでなく、別の物と交換した場合も、「譲渡」として扱われます。
税金がかからないのはどんなとき?「30万円」の線引き
売った利益のすべてに税金がかかるわけではありません。国税庁は、次のように案内しています。
| 売った物 | 売却益の扱い |
|---|---|
| 家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産 | 課税されない |
| 貴金属、宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるもの | 課税される |
出典:国税庁 タックスアンサー No.3105
政令(所得税法施行令25条)の条文では、30万円を超えると課税対象になる資産が次のように定められています。
- 貴石、半貴石、貴金属、真珠およびこれらの製品、べっこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
- 書画、こつとうおよび美術工芸品
判断の基準になるのは「1個または1組の価額が30万円を超えるかどうか」です。売る前に、業者の査定書や買取明細で、1点ごとの金額を確認しておくと整理しやすくなります。
損をしたときの扱い
高く買った古銭を安く売ってしまい、損が出ることもあります。この損失の扱いは、次のとおりです。
- 生活の用に供している資産(古着や家財など)の売却で損失が出ても、損失は生じていないものとみなされ、他の所得と差し引くことはできません(所得税法9条2項、国税庁 No.1906)
- 貴金属・書画・骨とうなどで1個または1組の価額が30万円を超えるものの損失も、原則として、給与所得など他の所得と損益通算できません(国税庁 確定申告書等作成コーナー)
課税対象になるときの税額の計算方法
課税対象になる場合の譲渡所得の金額は、国税庁の案内では次の式で計算します。
譲渡所得の金額 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 50万円
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 売って受け取った金額 |
| 取得費 | 一般に購入代金。購入手数料なども含まれる |
| 譲渡費用 | 売るために直接かかった費用 |
| 50万円 | 譲渡所得の特別控除。その年の譲渡益の合計に対して50万円で、譲渡益が50万円以下ならその金額まで |
出典:国税庁 タックスアンサー No.3152
さらに、所有期間によって次のように扱いが変わります。
| 所有期間 | 区分 | 課税対象になる金額 |
|---|---|---|
| 5年を超える | 長期譲渡所得 | 譲渡所得の金額の2分の1 |
| 5年以内 | 短期譲渡所得 | 譲渡所得の金額の全額 |
計算例(数字は計算方法を説明するための仮の金額です)
課税対象になる古銭を、所有期間5年超で売ったと仮定します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 150万円 |
| 取得費 | 30万円 |
| 譲渡費用(発送費など) | 1万円 |
| 特別控除 | 50万円 |
- 150万円 −(30万円 + 1万円)= 119万円
- 119万円 − 50万円 = 69万円(譲渡所得の金額)
- 長期譲渡所得なので、69万円 × 1/2 = 34.5万円が総合課税の対象
同じ金額でも、所有期間が5年以内なら69万円の全額が総合課税の対象になります。
同じ年に、短期と長期の売却益がある場合
特別控除の50万円は、その年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計に対して50万円です。両方の譲渡益があるときは、先に短期の譲渡益から50万円を差し引きます。
譲渡益の合計が50万円以下のときは、その金額までしか控除できません(国税庁 No.3152)。複数の古銭を別々の機会に売った場合も、同じ年の売却益は合計して考えます。
確定申告が必要になるのはどんなとき
国税庁によると、給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象となる給与所得者は、次のときに確定申告が必要です。
給与所得、退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える人
出典:国税庁 タックスアンサー No.1900
給与を2か所以上から受けている場合など、細かな条件は同じページに掲載されています。
なお、生活の用に供している資産(古着や家財など)の売却による所得は非課税で、この所得については確定申告が不要です(国税庁 No.1906)。
ご自身の場合に申告が必要かどうかは、国税庁の「税についての相談窓口」で相談できます。
申告書の作り方
申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。画面の案内に沿って金額を入力すれば、自宅から申告書の作成と提出ができ、必要な付表や明細書も入力内容から自動的に作成されます(国税庁 No.3105 関連リンク)。
申告書を作るときは、次の金額が必要になります。売る前の段階で記録を整理しておくと、あとの作業が楽になります。
| 必要になる金額 | 手がかりになる書類・記録 |
|---|---|
| 譲渡価額(売った金額) | 買取明細書、入金の記録 |
| 取得費(購入代金など) | 購入時の領収書、コレクションの記録、相続の場合は亡くなった方の書類 |
| 譲渡費用(売るためにかかった費用) | 発送費・出張費などの領収書 |
| 所有期間(5年超かどうか) | 取得した時期のわかる記録 |
相続した古銭を売るときの注意点
遺品整理などで相続した古銭を売る場合、所得税法60条1項に定めがあります。相続により取得した資産を譲渡した場合の譲渡所得の計算では、「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」と規定されています。
そのため、亡くなった方が古銭を取得した時期や取得費が、そのまま引き継がれます。所有期間が5年を超えるかどうかも、亡くなった方の取得時から数えます。
「取得費」にあたる購入時の金額は、領収書やコレクションの記録が残っているかどうかで整理しやすさが変わります。遺品の中に購入時の書類やメモがないか、売る前に探してみてください。
遺品整理で古銭を見つけたときの全体の流れは、次の記事でまとめています。
売却を繰り返す場合は区分が変わります
国税庁は、資産を「相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合の所得」について、譲渡所得ではなく事業所得または雑所得として課税されると案内しています(No.3105)。所得税法33条2項1号にも、営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得は譲渡所得に含まれないと定められています。
個人のコレクションを一度に整理して売る場合と、仕入れて売ることを繰り返す場合とでは、区分が異なります。
コラム:金貨・白金貨を業者に売る場合
金地金等(金・白金の地金、金貨・白金貨)の売買を業として行う者が、国内でそれらの譲渡を受けて200万円を超える対価を支払う場合は、税務署に支払調書を提出することが義務付けられています(国税庁 広島国税局の公表資料)。
金貨や白金貨を高額で売却した場合、買取業者から税務署へ取引の情報が届く仕組みがあります。
売る前に確認しておきたいこと
- 1点ごとの価額を査定書や買取明細で確認する
- 購入時の領収書や、相続の場合は亡くなった方の記録を探す
- 発送費・出張費など、売るために直接かかった費用の記録を残す
なお、売る前に汚れを落とそうと考えている方は、先に次の記事をご覧ください。
買取業者を比較したいときは、買取業者一覧で各社の特徴を確認できます。
まとめ
- 古銭を売って得た利益は、譲渡所得として総合課税の対象です
- 貴金属・宝石・書画・骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものは課税対象になります
- 計算式は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−50万円」で、所有期間が5年を超えると2分の1が課税対象です
- 給与所得者は、給与以外の所得金額の合計が20万円を超えると確定申告が必要です
- 相続した古銭は、亡くなった方の取得時期・取得費が引き継がれます
- 継続的に売却する場合は、事業所得または雑所得になります
よくある質問
Q. 売却益が出ていなければ、税金はかかりませんか?
A. 譲渡所得は売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するため、利益が出ていなければ課税される所得は生じません。また、損失が出ても他の所得と差し引くことはできません。
Q. 会社員です。古銭を売った利益が少額なら、確定申告は不要ですか?
A. 国税庁は、給与を1か所から受けていてその全部が源泉徴収の対象となる場合、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要と案内しています(No.1900)。
Q. 所有期間が5年を超えているかどうかは、どう数えますか?
A. 取得したときから売ったときまでの所有期間で判断します。相続した場合は、亡くなった方が取得した時から数えます。
Q. 古銭を別の物と交換した場合も、税金の対象になりますか?
A. 国税庁は、譲渡を「有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為」とし、通常の売買のほか交換なども含むと案内しています(No.3105)。
Q. 何度も売ると、税金の扱いは変わりますか?
A. 資産を相当の期間にわたり継続的に譲渡している場合の所得は、譲渡所得ではなく、事業所得または雑所得として課税されます(国税庁 No.3105)。
Q. 業者に売ると、税務署に知られますか?
A. 金・白金の地金や金貨・白金貨を業として売買する者が、200万円を超える対価を支払う場合は、税務署に支払調書を提出することが義務付けられています(国税庁 広島国税局の公表資料)。
この記事のデータソース
調査日:2026年10月14日(国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
- 国税庁 タックスアンサー No.3152「譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」
- 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁 タックスアンサー No.1906「給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「生活に通常必要でない資産を譲渡したとき」
- 国税庁 広島国税局「金地金等に係る譲渡所得調査等の状況」
- e-Gov法令検索:所得税法(9条、33条、60条)、所得税法施行令(25条)