裏面に「乾」の字が刻まれた小判をお持ちでしたら、それは宝永小判金(乾字小判)かもしれません。宝永小判金は、それまでの小判より大幅に軽量化された、江戸時代の貨幣改鋳を象徴する1枚です。この記事では、宝永小判金の歴史的背景や仕様、価格の考え方、そして偽物との見分け方や売却時の注意点を解説します。
宝永小判金とは?
宝永小判金は、宝永7年4月15日(1710年5月13日)から通用が始まった小判です。当時、幕府は災害の頻発や浪費によって財政難に陥っており、政治顧問の新井白石の提案を受け、勘定奉行の荻原重秀によって発行されたとされています。鋳造期間は宝永7年〜正徳4年(1710年〜1714年)です。
裏面に「乾」の字が刻まれていることから「乾字小判」とも呼ばれます。この「乾」の字は、中国古典『易経』の「乾為金」という考え方に由来するとされています。宝永小判金と宝永一分判金を総称して「宝永金」あるいは「乾字金」と呼びます。
基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通用開始 | 宝永7年4月15日(1710年5月13日) |
| 鋳造期間 | 宝永7年〜正徳4年(1710年〜1714年) |
| 規定量目 | 9.34g |
| 規定品位 | 金83.4%・銀16.6% |
| 当時の額面 | 1両 |
表面には鏨(たがね)によるごさ目が刻まれ、上下に桐紋を囲む扇枠、中央上部に「壹両」、下部に「光次(花押)」の極印があります。裏面には中央に花押、右上に「乾」の字が打たれているのが特徴です。直前まで発行されていた元禄小判金と比べて、量目が47.56%も軽くなっている点が大きな特徴です。
(出典:Wikipedia「宝永小判」記事、日晃堂の古銭コラム。通用開始日・量目・品位については複数の記述が一致しており確度は高いですが、一次資料(貨幣史研究資料)での再確認を推奨します)
価格の見方
宝永小判金は今日の法定通貨に含まれないため、額面をそのまま価値の基準にすることはできません。ここでは価格を3つの角度から見ていきます。
1. 当時の価値表示
1両という当時の通用価値は江戸期の貨幣制度に根ざしたもので、現代の円貨とは単純比較できない性質のものです。
2. 金・銀の地金価値
宝永小判金は金83.4%・銀16.6%の合金でできています。規定量目9.34gで計算すると、含まれる金は約7.79g、銀は約1.55gです。
田中貴金属の店頭買取価格(2026年8月25日17時公表、金1gあたり25,822円・銀1gあたり362.45円)で計算すると、金部分だけで約20万1,200円、銀部分は約560円となり、合計は約20万1,700円です。古銭場のコイン詳細データでは、執筆時点の材質価値は約18万6,900円と算出されており、大きなズレはありません。金銀の相場は日々変わるため、参照する時期によって多少前後する点はご了承ください。
3. 古銭としての希少性・骨董価値
宝永小判金は約1,151万5,500両という比較的多い数量が鋳造されたと伝えられており、現存数も江戸期の小判の中では多めです。そのため、地金価値に加えて、状態や刻印の鮮明さによって骨董的な価値が上乗せされる形になります。なお、裏面の験極印が「大」と「吉」の組み合わせになった「偶然大吉」と呼ばれる希少なタイプは、通常品より高値で取引される傾向があるとされています。
改鋳の前段にあたる元禄小判金、4年後に発行された正徳小判金もそれぞれ別記事で解説しています。
現在の実勢相場
古銭専門買取業者アンティーリンクが公表している買取価格表では、宝永小判金(乾字小判)の極美品は70万円(税込)とされています。買取福ちゃんのコラムでも「数十万円〜100万円前後」という相場が紹介されています。
複数の業者が示す価格帯はおおむね数十万円〜100万円程度に収まっており、地金価値(約20万円前後)に古銭としての希少性が上乗せされた水準といえます。
偽物を見分けるポイント
宝永小判金は現存数が比較的多い一方、模造品も出回っている貨幣です。次の点を確認しましょう。
- 重量を量る:規定量目は9.34g前後です。1g以上のずれがあるものは偽物のサインです。
- 色合いを確認する:金83.4%・銀16.6%の合金のため、深い金色ではなくやや淡い色合いになります。
- 裏面の「乾」の字を確認する:宝永小判金にしかない固有の刻印です。この字がなければ別の小判か偽物です。
- 極印を確認する:表面上部に「壹両」、下部に「光次(花押)」の極印があるかを確認しましょう。
- 磁石を近づける:金・銀の合金である本物は磁石に反応しません。磁石にくっつく場合は別の素材でできた偽物です。
- 専門機関に鑑定を依頼する:ここまでのポイントはあくまで目安です。試金石での擦り傷テストや自分で磨く行為は査定額を大きく下げるため絶対に行わず、日本貨幣商協同組合(JNDA)などの鑑定を受けた古銭・古美術品の専門店に相談することを強くおすすめします。
高く売る方法
貴金属店での即時売却は損をしやすい
宝永小判金は、地金(金・銀の重さ)としての価値に加えて、古銭としての骨董的な価値が上乗せされることがあります。裏面の験極印の組み合わせによっても評価が変わるため、自己判断で地金として安易に売却するのは避けましょう。
売却先による違い
| 売却先 | 想定される評価の傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般的な貴金属店・質店 | 金・銀の重量ベースでの評価が中心 | 地金価値としては評価されるが、希少性や状態は評価されにくい |
| 古銭・骨董専門の買取業者 | 地金価値に希少性・状態を加味した評価 | 験極印の組み合わせや真贋も含めて総合的に査定してもらえる |
重さを確認したら、真贋判定は専門業者に任せるのが安全です。古銭・貴金属の鑑定実績を持つ業者数社に査定を依頼し、提示された評価額や条件を比べたうえで売却先を選ぶとよいでしょう。