天保大判金は、江戸時代後期の天保9年(1838年)から鋳造された大判金です。江戸幕府が発行した5種類の大判(慶長・元禄・享保・天保・万延)の中で、鋳造枚数がもっとも少ないとされる希少な1枚です。
今回はそんな天保大判金の価値と買取相場、見分け方について解説していきます。注意点:天保大判金は現在の日本で通用する法定通貨ではありません。
天保大判金とは?
天保大判金は、天保9年(1838年)に鋳造が始まった大判金です。造幣局の資料によれば、量目(重さ)は165.4g、品位は金674/1000で、直前に発行されていた享保大判の規格をほぼそのまま踏襲していることから、「天保吹増大判」または「吹増大判」とも呼ばれています。表面の桐紋極印の細部が、享保大判とわずかに異なるのが特徴です。
鋳造のきっかけについては、天保8年(1837年)に大判の鋳造を担っていた「大判座」の15代当主・後藤真乗が「五両判」という新しい貨幣を発案したものの、これが通貨として扱われることになったため、鋳造権を貨幣鋳造の本家である「金座」に奪われてしまい、大判座が財政難に陥ったという経緯が伝えられています。この財政難を救う目的で、新たに天保大判の鋳造が認められたとされています。天保大判の墨書は、後藤四郎兵衛家の16代当主・方乗と、17代当主・典乗の2代が担当しました。
なお「天保大判は1838年から1860年まで発行された」と紹介されることがありますが、これは正確には鋳造期間ではなく、通用(流通が認められた)期間を指しています。実際に新規の鋳造が行われたのは、1838年6月〜8月、同年9月〜12月、1840年12月〜1841年4月の3回の時期に限られ、それ以降の新規鋳造の記録はありません。天保大判はその後、享保大判とともに流通を続け、万延元年(1860年)4月10日をもって通用が区切られています。
表面には「拾両 後藤(花押)」の文字が墨で書き込まれています。この「拾両」は10両分の価値という意味ではなく、44匁(約165g)という重さを表したものです。

天保大判金の価格の見方
現代の記念金貨であれば「額面」「素材」「希少性」という3つの切り口で価値を考えられますが、天保大判金は現行の法定通貨ではないため、額面を現代の円にそのまま置き換える公式な仕組みがありません。ここでは代わりに、「当時の価値表示」「素材としての価格」「希少性による価格」という3つの視点から見ていきます。
天保大判金の当時の価値表示
天保大判金の表面には「拾両」の文字が墨書きされていますが、これは前述の通り重さを表す表記であり、10両の価値があるという意味ではありません。
当時の両替の場では、大判に含まれる金の量に応じて価値が換算されており、天保大判に固有の公式な換算比率を示す一次資料は今回確認できませんでした。現在の法定通貨ではない以上、この「拾両」を現代の円に換算した公式な額面価値というものは存在しません。
天保大判金の素材の価格
素材の価格とは、貨幣そのものに含まれる金属の価値を指します。古銭場では、天保大判金の重量を165.4g、金の含有率を67.4%として素材価値を算出しており、その結果は次の通りです。
素材価値:¥2,427,044.31
このように、素材としての価値だけでも240万円を超える水準にあることが分かります。
天保大判金の希少性の価格
天保大判金の鋳造枚数は1,887枚とされており、これは江戸幕府が発行した5種類の大判(慶長・元禄・享保・天保・万延)の中でもっとも少ない枚数です。参考までに、他の大判の鋳造枚数は慶長大判16,565枚、元禄大判31,795枚、享保大判8,515枚、万延大判17,097枚とされており、天保大判の鋳造枚数の少なさが際立っています。
ただし、これはあくまで当時の鋳造枚数であり、現在実際に何枚が現存しているかを示す公式な資料は確認できませんでした。鋳造枚数の少なさがそのまま現存数の少なさを意味するとは限らない点にご注意ください。
古銭・記念硬貨の買取業者が公開している取引参考価格を確認したところ、状態(美品・並品など)によって500万円台〜1,000万円台まで幅があり、複数の業者が示す価格帯はおおむねこの範囲に収まっています。
※この価格帯は、あくまで買取業者による査定・カタログ上の参考価格であり、コインオークションでの実際の落札記録ではない点にご注意ください。
天保大判金の真贋を見分けるには
天保大判金は現存数が少なく、それにもかかわらず贋作の流通量が比較的多いとされる貨幣です。以下にいくつかの確認ポイントを挙げますが、最終的な真贋の判断は必ず専門機関に委ねることが前提になります。
重量を確認する
規定の量目は165.4g前後とされています。手作業で成形された歴史的鋳造貨幣のため、資料によって記載数値にはやや幅がありますが、目安として1g以上ずれている場合は、偽物を疑う理由の一つになります。
素材と磁石への反応を確認する
天保大判金は金と銀の合金でできています。金も銀も磁石にはほとんど反応しない金属です。磁石を近づけてはっきり引き寄せられるようであれば、偽物と判断できます。
桐紋極印の形状を確認する
天保大判金は、直前に発行された享保大判とほぼ同じ規格で作られていますが、桐紋極印の細部にわずかな違いがあります。天保大判のほうが極印がやや大きく、桐紋の葉の膨らみが強く、線も太めに打たれている点が特徴です。また、裏面左下の極印の縁が二重になっている点も、享保大判との識別ポイントとして挙げられています。
極印の輪郭が不自然に整いすぎている、位置がずれている、大きさが不揃いといった特徴も、偽造を疑うポイントになります。
墨書を確認する
表面には「拾両 後藤(花押)」という、後藤家の手による墨書きが記されています。文字や花押の線が乱れていたり、後藤家らしい筆致の特徴が見られなかったり、表面がつるつるに光っている場合は、現代の複製品である可能性があります。
専門機関に鑑定を依頼する
ここまで紹介したポイントはあくまで目安であり、これだけで真偽を確定的に判断するのは非常に困難です。なお、貨幣の表面を傷つける試金石での擦り傷テストや、自分で磨く行為は査定額を大きく下げる原因になるため、絶対に行わないでください。
実際の取引の場でも、日本貨幣商協同組合(JNDA)などによる鑑定書が添えられた状態でやり取りされるのが一般的です。天保大判金、あるいはそれに似たものをお持ちの場合は、自分だけで判断せず、古銭・古美術品に詳しい鑑定士や買取店に相談することをおすすめします。
天保大判金を売却する際の注意点
繰り返しになりますが、天保大判金は現行の法定通貨ではないため、銀行へ持ち込んで換金するという選択肢自体がありません。
またこのコインの価値は、金という素材の価値だけでなく、鋳造枚数の少なさや歴史的背景、美術品としての評価が大きく上乗せされたものです。そのため、一般的な貴金属店での地金買取だけでは、本来の価値を十分に評価してもらえない可能性があります。
先ほど紹介した買取業者の参考価格は、あくまで一部の業者が公開している査定基準であり、すべての個体が同じ水準で取引されるとは限りません。特に、保存状態や墨書の代(16代方乗か17代典乗か)によっても評価は変わってくる可能性があります。
天保大判金のような歴史的に価値の高い古金銀をお持ちの場合、あるいはお持ちかもしれないという場合は、古銭・古美術品を専門に扱う買取店や、実績のあるコインオークションに査定を依頼することをおすすめします。
古銭場では、複数の買取会社を比較し、お客様に合った買取会社をご紹介しています。まずは各社の無料査定をご利用いただき、査定額やサービス内容を比較してみてください。