旧5円金貨は、明治3年(1870年)・4年(1871年)銘で発行された、日本で最初期の近代的な金貨の1つです。表面に龍の意匠をあしらった大型の5円金貨で、直径23.84mmというサイズが特徴です。
明治5年以降には、同じ図柄のまま直径をひとまわり小さくした「旧5円金貨(縮小)」が明治30年まで発行されていますが、これは規格が異なる別種の金貨として扱われます。今回は、直径23.84mmの明治3・4年銘に絞って解説します。
このページでは、旧5円金貨の価値の考え方、確認できている取引事例、そして本物・偽物を見分けるポイントについて整理します。注意点:旧5円金貨は現在の日本で通用する法定通貨ではありません。
旧5円金貨とは?
旧5円金貨は、明治4年(1871年)の新貨条例に基づいて製造された金貨です。銘は「明治3年」「明治4年」の2種類がありますが、造幣局の操業開始自体が明治4年であるため、明治3年銘の実際の製造も明治4年以降に行われています。
素材は金90%・銅10%の合金で、重さ8.33g、直径23.84mmです。表面には龍の図、

裏面には旭日と錦の御旗があしらわれています。

裏面中央の太陽(日章)の周囲に輪の刻印がある「有輪」と、ない「無輪」の2種類が存在し、この違いによる価格差は基本的にないとされています。
また明治3年銘には、表面の龍のウロコが通常より鮮明に刻印された「明瞭鱗(明瞭ウロコ)」と呼ばれる希少なバリエーションが存在します。明治3年銘は製造技術上ウロコが不鮮明なものが多かったため、鮮明に打たれたものは希少とされ、他の個体より高値で取引される傾向があります。
明治3・4年銘の発行枚数は、合わせて273,536枚です。明治5年以降は、同じ図柄のまま直径21.82mmに縮小された「旧5円金貨(縮小)」に切り替わり、明治30年まで発行が続きました。
旧5円金貨の価格の見方
現代の記念硬貨であれば「額面」「素材」「希少性」という3つの切り口で価値を考えられますが、旧5円金貨は現行の法定通貨ではないため、額面を現代の円にそのまま置き換える公式な仕組みがありません。ここでは代わりに、「当時の価値表示」「素材としての価格」「希少性による価格」という3つの視点から見ていきます。
旧5円金貨の当時の価値表示
旧5円金貨の額面は「5円」で、明治初期の新貨条例のもとで発行された金貨としては、1円・2円・5円・10円・20円という体系の中の1つにあたります。
ただしこれは明治時代の貨幣制度における価値の表し方であり、貨幣法そのものが廃止された現在、この「5円」を現代の円に換算した公式な額面価値というものは存在しません。
旧5円金貨の素材の価格
素材の価格とは、貨幣そのものに含まれる金属の価値を指します。古銭場では、旧5円金貨の品位・重量(金90%・銅10%、8.33g)をもとに現時点の金相場から素材価値を算出しており、結果は下記の通りです。
素材価値:¥169,487.98
この金額は、貨幣としての希少性・歴史的価値を含まない、金地金としての実質的な下限価格の目安になります。
旧5円金貨の希少性の価格
旧5円金貨は、明治3・4年銘合わせて273,536枚という発行枚数で、後続の縮小版(明治5〜30年銘)と比べても発行枚数が少ない年銘です。なお、現存数を示す公的な統計は見当たりませんでした。
旧5円金貨のオークションでの取引実績
Yahoo!オークションの終了済み取引のうち、日本貨幣商協同組合(JNDA)やPCGSなど第三者機関の鑑定を経た、真贋が明確な1枚単体の出品を確認したところ、下記のような落札結果がありました。
| 落札価格 | 年銘 | 備考 |
|---|---|---|
| 204,000円 | 明治3年 | X線成分分析済み |
| 338,000円 | 明治3年 | 有輪・PCGS鑑定(準未使用) |
| 344,000円 | 明治3年 | 無輪・PCGS鑑定(準未使用) |
| 450,000円 | 明治3年 | 明瞭鱗・鑑定書付き |
| 522,000円 | 明治3年 | 無輪・明瞭鱗・JNDA鑑定(美品) |
| 281,000円 | 明治4年 | JNDA鑑定書付き |
| 400,000円 | 明治4年 | JNDA鑑定(未使用-) |
| 485,000円 | 明治4年 | 無輪・PCGS鑑定(未使用、MS63) |
| 661,100円 | 明治4年 | 有輪・極美品 |
※Yahoo!オークションの終了済み取引のうち、鑑定書付きまたは成分分析済みで真贋が明確な1枚単体の出品を参考に作成。落札価格は状態・鑑定の有無・有輪無輪・明瞭鱗の有無によって大きく異なります。
一方で、同じ検索結果の中には数百円〜数千円という、素材価値(約169,488円)を大きく下回る出品も多数見つかりました。旧5円金貨は金90%の実質的な地金価値だけで少なくとも17万円前後になるため、これを大きく下回る価格の出品は、実物の金貨ではなくレプリカ・模造品である可能性が高いといえます。旧5円金貨を含む明治期の金貨は、台湾・香港製の精巧な贋造品が古くから出回っていることでも知られており、出品価格が相場より極端に安い場合は特に注意が必要です。
旧5円金貨の歴史的価値
旧5円金貨は、明治4年(1871年)の新貨条例によって日本が近代的な貨幣制度(円・銭・厘)へ移行する中で発行された、最初期の金貨の1つです。
発行から150年以上が経過しており、前述のオークション実績が示す通り、鑑定済みの個体は素材価値(約169,488円)を大きく上回る価格で取引されています。ただし、個体ごとの状態や真贋、有輪・無輪・明瞭鱗といった型式の違いによって評価額は大きく変わるため、一律に「古いから高い」と判断することはできません。
旧5円金貨の真贋を見分けるには
旧5円金貨の本物と偽物を見分けるポイントを紹介します。ただし最終的な真贋の判断は、必ず専門機関に委ねることが前提になります。
重量を確認する
旧5円金貨の公式な重量は8.33gで、正規品は8.25g〜8.40gの範囲に収まります。精密な電子はかりで測り、この範囲から大きく外れている場合は偽物の可能性があります。特に5g台まで軽いものは、偽物として確認されている重量帯です。ただし、重量を8.33g近くに精巧に合わせた偽物も存在するため、重さだけで本物と判断してはいけません。
磁石への反応を確認する
金・銅はいずれも磁石に反応しない金属です。磁石にはっきりと引き寄せられる場合は、偽物と判断できます。
龍の意匠の彫りの深さを確認する
本物は表面の龍のウロコや顔の輪郭がシャープに浮き出ており、細部の彫りが深いのが特徴です。偽物ではウロコがぼやけていて、全体が滲んだような印象になっている場合があります。
側面の溝(リード)を確認する
本物は側面の溝が端まで均一に入っています。
溝が不均一だったり、端まで届いていなかったりする場合は、偽物の可能性があります。
バリエーション表記を鵜呑みにしない
「有輪」「無輪」「明瞭鱗」など高値がつくバリエーションほど、偽物が集中する傾向があります。出品タイトルにこれらの名称が記載されていても、それだけで真正品と判断せず、鑑定書の有無や出品者の実績とあわせて確認することが重要です。
専門機関に鑑定を依頼する
ここまで紹介したポイントはあくまで目安であり、これだけで真偽を確定的に判断するのは困難です。
実際の取引の場でも、日本貨幣商協同組合(JNDA)やPCGSなどの第三者機関による鑑定書・鑑定ケース付きで取引されるのが一般的です。旧5円金貨、あるいはそれに似たものをお持ちの場合は、自分だけで判断せず、古銭専門の鑑定士や買取店に相談することをおすすめします。
旧5円金貨を売却する際の注意点
繰り返しになりますが、旧5円金貨は現行の法定通貨ではないため、銀行へ持ち込んで換金するという選択肢自体がありません。
またこのコインの価値は、金という素材の価値(約169,488円)だけでなく、発行枚数の少なさや年銘・有輪無輪・明瞭鱗といった型式の違いが大きく上乗せされたものです。そのため、一般的な貴金属店での地金買取だけでは、本来の価値を十分に評価してもらえない可能性があります。
先ほど紹介したオークションの取引事例は、あくまで鑑定済み・真贋が明確な個体の実例に過ぎず、すべての個体が同じ水準で取引されるとは限りません。個体の状態や年銘、型式、鑑定の有無によって、実際の評価額は大きく変わってきます。
旧5円金貨のような明治期の金貨をお持ちの場合、あるいはお持ちかもしれないという場合は、古銭を専門に扱う買取店や、実績のあるコインオークションに査定を依頼することをおすすめします。
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