昭和61年(1986年)に発行された「昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨幣」、この銀貨は、昭和天皇の在位60年を祝って発行された記念貨幣で、同時発行の10万円金貨・500円白銅貨とともに大きな話題を呼びました。そして近年、この銀貨を狙った大規模な偽造事件が起きていることでも注目されています。
今回はそんな昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨(天皇陛下御在位60年記念1万円銀貨)の価値と買取相場、そして偽物を見分けるポイントについて解説していきます。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨とは?
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨幣は、1986年(昭和61年)11月10日に発行された、昭和天皇の在位60年を記念する銀貨です。同時に10万円金貨・500円白銅貨も発行されました。
発行のきっかけは、1985年(昭和60年)11月18日、当時の竹下登大蔵大臣が在位60年を祝う金貨の発行方針を発表したことでした。当時の臨時通貨法における臨時補助貨幣の額面上限は500円だったため、1964年の東京オリンピック記念貨幣のときと同様に、「天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律」という特別法が制定され、この金貨・銀貨発行の根拠となりました。なお、実際にこの記念貨幣事業を企画したのは、後に「ミスター円」と呼ばれることになる、当時大蔵省理財局国庫課長だった榊原英資氏だったとされています。
金貨・銀貨は発行前から大きな話題となり、引き換えのための抽選券配布日には人が殺到する社会現象になりました。
表面には日の出と瑞鳥・瑞雲があしらわれ、

裏面には菊花紋章が配されています。

素材は純銀(品位99.9%以上)、量目20g、直径35mm、側面には偽造防止のギザ(リード加工)が施されています。発行枚数は1,000万枚です。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の価格の見方
貨幣の価格の決め方は、大きく分けて3つあります。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の額面の価格
1つ目は額面の価格です。これは貨幣に印刷・刻印されている「公式な価値」のことで、今回の天皇陛下御在位60年記念1万円銀貨の額面は10,000円になります。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の素材の価格
2つ目は素材の価格になります。これはその貨幣に使われている金属そのものの価値のことです。素材の価格の計算式は下記の通りです。
素材価値(円) = 重さ(g) × 含有率(%) × 金属価格(円/g)
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨は純銀(99.9%以上)で、重さ20g、直径35mmです。古銭場では、この品位・重量をもとに現時点の銀相場から素材価値を算出しており、結果は下記の通りです。
素材価値:¥6,142.61
ここで注目したいのは、この銀貨は素材価値が額面(1万円)を下回っているという点です。これまで紹介してきた記念貨幣の多くは「素材価値が額面を上回る」パターンでしたが、この銀貨は逆になっています。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の希少性の価格
希少性の価格は「どれだけ手に入りにくいか」「どれだけ欲しい人がいるか」によって上乗せされる価値のことです。希少性の価格を測る上で必要な要素としては、発行枚数、現存枚数、人気需要、保存状態、歴史的価値などがあります。
これを踏まえた上で、今回の昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の発行枚数、人気需要を見ていきます。
※現存枚数の把握は不可能であり、保存状態も1枚ごとに異なるため、ここでは説明を控えさせて頂きます。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の発行枚数
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の発行枚数は、財務省・造幣局の記録によると1,000万枚です。記念貨幣としては多い部類に入り、素材価値が額面を下回っていることもあわせて、コレクター的な希少性によるプレミアはほとんど付きません。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の人気需要
人気需要に関しては、ヤフオク!などのオークションサイトでいくらで取引されているかを確認するのが参考になります。
直近4週間のヤフオク!実績データによると、平均落札価格は10,532円、価格帯は1,000円〜25,280円となっており、新品未使用(ブリスターパック入り未開封)では平均10,195円で取引されています。第三者機関(PCGS等)による鑑定を受けたものは、状態によって2万円を超える価格が付くこともあります。
なぜ素材価値(約6,100円)よりも高い、額面に近い水準で取引されているのでしょうか。古銭鑑定士の解説によれば、この銀貨は法定通貨であるため「貨幣損傷等取締法」により金属として溶解・鋳潰しをすることが法律で禁止されており、地金価格に単純に連動しないことが理由の一つとされています。つまり、素材としてではなく「1万円として使える貨幣」であることが価格の下支えになっているということです。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨をめぐる偽造事件
この銀貨は、実は現在進行形で大規模な偽造事件の対象になっている、注意が必要な記念貨幣です。詳しくは次の「偽物を見分けるポイント」で解説します。
なお、同時に発行された10万円金貨については、1990年(平成2年)にスイス経由で10万7946枚もの偽造金貨が流入し、被害額108億円近くにのぼる大規模事件が発覚しています。ただし、これは金貨をめぐる別の事件であり、後述する1万円銀貨の偽造事件と関連づける公式な情報は見当たりません。時期(30年以上の隔たり)も手口も異なる、別の事件として扱うべきものです。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の偽物を見分けるポイント
この銀貨については、財務省が過去に複数回、偽造貨幣の発見を公式発表しています。
- 2013年(平成25年)12月・2016年(平成28年)12月:財務省が偽造発見を発表(2016年発表分は2013年発見分と同型と財務省が明記)
- 2025年(令和7年)12月25日:財務省が、同年4月以降に発見された偽造の疑いのある1万円銀貨300枚について造幣局が鑑定した結果、全数が偽造貨幣であったと発表
2013〜2016年に見つかった偽造貨幣と、2025年に見つかった偽造貨幣とでは、財務省が公表した特徴(直径の偏差の方向など)が一致しておらず、同一の型・ロットとは考えにくい点に注意してください。以下では、直近(2025年発表分)の特徴を中心に紹介します。
さらに、この偽造銀貨をめぐっては刑事事件にも発展しています。2026年1月7日、警視庁・茨城県警・埼玉県警の合同捜査本部が、偽造通貨行使容疑で中国籍の男を含む4人を逮捕しました。捜査本部は、2025年4月以降、グループが7都県の信用金庫・農業協同組合の計30支店で延べ約630枚の偽造銀貨を両替していたとみて捜査していました。その後、2026年2月には長野県警が余罪で新たに2人を逮捕、2026年3月5日には主犯格の被告が偽造通貨の輸入容疑で再逮捕され、この時点で捜査本部はグループの手口が7都県約40支店・1000枚超の偽造銀貨に及んでいたとみています(2026年8月時点で、これ以降の続報は確認されていません)。
このように、この銀貨に関しては「昔の話」ではなく、現在も流通リスクが指摘されている状況です。手元にある銀貨や、これから購入しようとしている銀貨については、以下のポイントを確認してください。
光沢と色味を確認する
財務省が2025年に公表した偽造貨幣の特徴として、本物と比べて光沢がなく、全体的に白っぽく見える点が挙げられています。
本物の純銀は、独特の輝きのある光沢を持っています。ザラついた質感で白っぽく見える場合は、偽物の可能性を疑ってください。
直径を確認する
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨の公式な直径は35mmです。財務省の発表によると、2025年に見つかった偽造貨幣は本物よりも直径がやや小さいという特徴があります。ノギスなどで正確に測定し、公式な数値との差を確認しましょう。
重量を確認する
公式な量目は20gです。精密な電子はかりで計測し、大きくずれている場合は偽物の可能性があります。
ただし、重量が一致していても、それだけで本物とは断定できません。銀に近い比重の別の金属を使った偽物も考えられるため、ほかの特徴と合わせて確認する必要があります。
磁石への反応を確認する
純銀は磁石に強く引き寄せられる金属ではありません。そのため、銀貨が磁石に明確にくっつく場合は、鉄やニッケルなどを使用した偽物の可能性があります。ただし、磁石に付かなければ本物ということではないため、他の項目とあわせて確認してください。
出どころ・入手経路に注意する
上記の刑事事件では、偽造グループが信用金庫や農業協同組合の窓口で偽名を使って両替を繰り返していたことが分かっています。銀行や信用金庫の窓口では鑑定士による真贋確認が行われるわけではないため、個人間の売買やフリマアプリ・オークションで入手する際は特に注意が必要です。
少しでも不安がある場合は、警察または日本銀行に相談するか、古銭買取の専門家による鑑定を受けることをおすすめします。
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨(天皇陛下御在位60年記念1万円銀貨)を高く売る方法とは?
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨(天皇陛下御在位60年記念1万円銀貨)は銀行に持ち込むと額面通りの扱いしか受けられませんが、下表の通り発行時価格・素材価値・買取相場はいずれも額面を大きく上回ります。売却する際は銀行ではなく、古銭店や記念貨幣を扱う買取店で査定を受けることをおすすめします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 額面 | 10,000円 |
| 素材 | 純銀(99.9%以上) |
| 素材価値(現在) | 約6,143円(額面を下回る) |
| オークション実勢価格帯 | 約10,000円〜12,000円前後(並品〜新品未使用)、鑑定済み良品で2万円超も |
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