この金貨は昭和61年(1986年)、昭和天皇の御在位60年を記念して発行された記念貨幣です。日本で初めて発行された記念金貨であり、初めて1万円を超える額面を持つ貨幣、かつ第二次世界大戦後初の金貨という、貨幣史に残る一枚でもあります。
今回はそんな昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の価値と買取相場、見分け方について解説していきます。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨とは?
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨は、昭和天皇の御在位60年を記念して、日本政府が発行した記念貨幣です。当時の臨時補助貨幣の額面上限は500円であったため、この10万円という額面の貨幣を発行するにあたっては、「天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律」(昭和61年法律第38号、昭和61年4月28日公布)という特別法が制定されました。※同法は昭和63年(1988年)4月1日に廃止されています。
この記念貨幣は、10万円金貨幣・1万円銀貨幣・500円白銅貨幣の3貨種で構成されています(500円白銅貨は既存の臨時補助貨幣制度の範囲内のため、特別法の対象は10万円金貨と1万円銀貨のみです)。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨幣(昭和61年11月10日発行、年銘は昭和61年)
昭和天皇御在位60年記念1万円銀貨幣(昭和61年11月10日発行、年銘は昭和61年)
昭和天皇御在位60年記念500円白銅貨幣(昭和61年10月21日発行、年銘は昭和61年)
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨のデザインは、表面に「鳩と水」、

裏面に皇室の御紋章である菊花紋章があしらわれています。

この金貨の発行枚数は、昭和61年(1986年)発行分が1,000万枚、翌昭和62年(1987年)に追加発行された分が100万枚で、合計1,100万枚にのぼります。追加発行分の一部は日本初の一般販売向けプルーフ金貨として発売されました。
なお、金貨・銀貨ともに金融機関の窓口で額面どおりに交換される形で発行され、抽選券が発行されるほどの人気となりました。
この金貨の側面には、ギザが採用されています。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の価格の見方
ここで、前提として貨幣の価格の決め方は大きく分けて3つあります。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の額面の価格
1つ目は額面の価格になります。これは要はそのお金に印刷・刻印されている「公式な価値」のことです。
例えば、100円玉の額面は100円、500円玉の額面は500円になります。つまり、今回の昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の額面は10万円です。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の素材の価格
2つ目は素材の価格になります。これはその貨幣に使われている金属そのものの価値のことです。素材の価格の計算式は下記のように計算します。
素材価値(円) = 重さ(g) × 含有率(%) × 金属価格(円/g)
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨は純金(含有率100%、品位.9999)で重さが20g、直径は30mmです。古銭場では、この金貨の素材価値を上記の計算式に基づき算出しており、結果は下記の通りです。
素材価値:¥433,260
額面10万円に対して、素材だけで4倍以上の価値があることが分かります。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の希少性の価格
希少性の価格は「どれだけ手に入りにくいか」「どれだけ欲しい人がいるか」によって上乗せされる価値のことです。希少性の価格を測る上で必要な要素としては、発行枚数、買取相場、オークションでの取引実績、歴史的な位置づけなどがあります。
これを踏まえた上で、今回の昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の発行枚数、買取相場、オークション実績、歴史的な位置づけを見ていきます。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の発行枚数
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の発行枚数は、昭和61年銘が1,000万枚、昭和62年銘が100万枚の合計1,100万枚です。
昭和61年銘のうち、最終的に910万枚が市中に出回り、未引換の90万枚については鋳潰されました。翌年追加発行された昭和62年銘(100万枚)は、当初の発行分よりも枚数が少なく、希少性が高いとされています。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の買取相場
古銭場では、買取価格を日々更新している業者のデータをもとに、本日時点の買取参考価格を算出しています。
最高買取参考価格:¥460,500
平均買取参考価格:¥447,774
最低買取参考価格:¥435,034
(2026年7月22日時点の古銭場データより。実際の買取価格は古銭の状態や依頼先の業者によって異なります)
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨のオークションでの取引実績
人気需要に関しては、ヤフオクやメルカリなどのオークションサイトを参考にしてもらい、いくらで取引されているのかを確認するのが良いです。
※注意点:オークションで取引されてる額はその貨幣の平均価格ではないです。その貨幣に傷や汚れがどれだけあるか(保存状態)によって価格が変動しますので注意して見てください。また、観賞用レプリカ品や記念メダルが同じキーワードで多数出品されており、これらは数千円程度と純金製の本物とは全く異なる価格帯で取引されているため、混同しないよう注意が必要です。
では、今回の昭和天皇御在位60年記念10万円金貨(純金・ブリスターパック入り)を例に見ていきましょう。
| 落札日 | 落札価格 | 状態 |
|---|---|---|
| 7月20日 | 447,000円 | 未使用(昭和62年銘、純金K24) |
| 7月19日 | 451,000円 | 未使用(昭和62年銘、ブリスターパック入り、純金K24) |
| 7月10日 | 456,000円 | 未使用(昭和61年銘、ブリスターパック入り、純金K24) |
(Yahoo!オークションの終了済み取引を参考に作成。落札価格は商品の状態や付属品、落札日によって異なります)
買取参考価格・素材価値と近い水準で取引されていることが分かります。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の歴史的な位置づけ
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨は、日本で初めて発行された記念金貨であり、初めて1万円を超える額面を持つ貨幣、かつ第二次世界大戦後初の金貨という点で、貨幣史の中でも特に大きな節目となった一枚です。
一方で、この金貨は発行から約40年が経過した記念貨幣であり、江戸時代の大判・小判や明治時代の金貨のような、長い年月を経た歴史的価値が確立しているわけではありません。
また記念貨幣は過去にも度々発行されており、今回が初めてではありません。そのため、記念貨幣だからと言って将来的に高い価値が付き続けると断定することはできません。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の偽物を見分けるポイント
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の本物と偽物を見分けるポイントを紹介します。
重量と直径を確認する
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨の公式な重量は20g、直径は30mmです。また、素材には純金(品位.9999)が使用されています。
金貨単体を精密な電子はかり(0.01g精度)とノギスで測り、重量や直径が公式の数値から外れている場合は、偽物の可能性があります。廉価な観賞用レプリカ品は15g以下と明らかに軽いものが多く、この時点で判別できることが多いです。
ただし、造幣局のブリスターパックに入っている金貨は、パックを含めた重量では判定できません。確認のために無理にパックから取り出すと、金貨に傷や指紋が付き、価値を下げるおそれがあるため注意してください。
図柄と刻印の精密さを確認する
表面の「鳩と水」、裏面の菊花紋章は、いずれも彫刻が精緻に仕上げられています。「日本国」「拾万円」「昭和六十一年」(または「昭和六十二年」)の刻印が明瞭かどうか、レリーフ(浮き彫り)の線がぼやけていないかを、ルーペなどを使って確認しましょう。
偽物では、刻印が浅い、文字線が太い、文字の角が丸い、模様の一部が省略されているといった特徴が見られる場合があります。
磁石への反応・熱伝導性を確認する
純金は磁石にほとんど反応しません。磁石にはっきりと引き寄せられる場合は、偽物の可能性が高いといえます。また金は熱伝導性が高いため、触れるとすぐに体温が伝わるという特徴もあります。
ただし、磁石に反応しないからといって本物と断定することはできません。後述するタングステンのように、金と比重の近い金属を使った偽造品は、磁石だけでは判別できない場合があるため、他の項目とあわせて確認してください。
タングステン偽造品と過去の大規模偽造事件に注意する
この金貨は、平成2年(1990年)1月29日に大量偽造が発覚した前歴があります。確認された偽造金貨の枚数は10万7,946枚、額面が10万円であったため被害額は107億9,460万円にのぼり、このうち8万5,647枚がすでに日本銀行に還流していたことが判明しました。なお、この偽造グループは特定されないまま今日に至っています。
こうした偽造品の中でも特に注意が必要なのが、タングステン製の精巧な偽造品です。タングステンは金と比重が非常に近いため、重さだけでは本物と見分けがつかず、買取店が誤って買い取ってしまった事例も報告されています。重量・磁石反応に加え、可能であればX線蛍光分析(XRF)などの専門機器による判定も検討すると安心です。(この事件を受けて、その後発行された記念金貨には様々な偽造防止対策が施されるようになりました。)
ブリスターパック・購入先を確認する
正規品は造幣局のブリスターパック(透明樹脂製の密封ケース)に封入された状態が基本です。パックの意匠が本物と異なる、開封済みで中身だけが単体で流通している、といった場合は出所を慎重に確認したほうがよいでしょう。
ネットオークションで相場より極端に安い出品、ピンボケ画像、一方向のみの写真しか掲載されていない出品は危険信号です。真贋の判定に迷う場合は、古銭買取の専門業者や鑑定士に相談することをおすすめします。
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨を高く売る方法とは?
ここで、こうした記念硬貨を売りたい方へ注意点があります。それは、絶対に銀行で交換してもらわないこと。この昭和天皇御在位60年記念10万円金貨は銀行に持っていくと、10万円と交換されます。
理由は、昭和天皇御在位60年記念10万円金貨は法定通貨(額面10万円の貨幣)だからです。そのため、銀行では額面どおり10万円として扱われます。
しかし、重要なのはここからです。
この金貨は他の記念貨幣のようにあらかじめプレミアム価格で販売されたものではなく、発行当時、金融機関の窓口で額面どおり10万円と交換されただけの貨幣です。
また素材は純金100%で作られています。ということは金価格の推移によって価格は大きく変わるということです。
再度整理すると、昭和天皇御在位60年記念10万円金貨は、
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 額面 | 10万円 |
| 発行方法 | 金融機関窓口での額面(10万円)交換 |
| 素材価値 | 約433,260円 |
| 買取参考価格(現在) | 約435,034円〜460,500円 |
つまり、額面どおりに交換されただけの貨幣にもかかわらず、現在の素材価値・買取相場のほうがはるかに高いことがここで分かります。
なので、もし売却を考えているなら、銀行へ持ち込むのは非常にもったいないです。古銭店や記念貨幣を扱う買取店、オークションなどで査定を受けるほうが高く売れる可能性があります。
古銭場では、複数の買取会社を比較し、お客様に合った買取会社をご紹介しています。まずは各社の無料査定をご利用いただき、査定額やサービス内容を比較してみてください。